「取れた」と判断しても、歯石が残っていることがあります
歯周ポケットの中の歯石を完全に確認・除去することは簡単ではありません。
1990年の研究では、スケーリング・ルートプレーニング後の476歯面を顕微鏡で調べたところ、57%の歯面に微細な歯石の残存が認められました。
さらに、顕微鏡で歯石が残っていた歯面のうち、77.4%は臨床的には「歯石なし」と判断されていました。
つまり、術者が手の感覚では「取れている」と判断していても、実際には歯石が残っている場合があるということです。
出典:Journal of Periodontology,1990
歯周病が進行するほど、歯石の除去は難しくなります
歯周ポケットが深くなるほど、歯石の除去が難しくなることも報告されています。
Rsbbaniらの研究では、ポケットが深くなるほど歯肉縁下歯石(ポケットの中の歯石)の残存が増えることが示されています。
また別の研究では、通常の非外科的なスケーリング後に歯石が完全に除去されていた歯面は、
1~3mm:86%
4~6mm:43%
6mm超:32%
と報告されています。
特に、歯根の溝やくぼみ、複雑な形態をした部位では、治療の難易度はさらに高くなります。
歯周病が進行するほど、「手の感覚だけで確実に処置する」ことは難しくなる。
これが、私たちが視覚情報を重要視する理由です。
出典:Journal of Clinical Periodpntology,1986
マイクロスコープを使用した治療についても研究されています
重度歯周炎患者の抜歯予定歯を対象に、肉眼・拡大鏡・歯科用マイクロスコープを使用したスケーリング・ルートプレーニング(SRP)を比較した研究では、処置後の歯根面を分析した結果、マイクロスコープを使用した群で、より良好な歯根面清掃結果が認められたと報告されています。
また、拡大視野を用いた別の研究でも、肉眼で処置した場合と比較して、残存歯石が少なく、歯根面へのダメージも少なかったと報告されています。
ただし、マイクロスコープを用いた非外科的歯周治療については、現時点で大規模な臨床研究が十分に蓄積されているわけではありません。
当院では、マイクロスコープを使用すれば必ず治療結果が良くなる、という考え方はしていません。
出典:Contemporary Clinical Dentistry,2013
出典:Journal of Indian Society of Periodontology,2018
マイクロスコープを使えば、すべてが見えるわけではありません
マイクロスコープを使用しても、深い歯周ポケットの中や複雑な歯根面をすべて直接確認できるわけではありません。
歯肉に覆われている部分や、器具・光が届きにくい場所もあります。
だからこそ、
「マイクロスコープなら全部見える」ではなく、「確認できる情報を増やす」
というのが、当院の考え方です。