なぜ歯周病治療にレーザーを使うのか
当院で使用しているNdレーザーとは
歯科で使用されるレーザーにはさまざまな種類があり、波長によって組織への作用は異なります。
当院で使用しているNd:YAG(ネオジウム・ヤグ)レーザーは、波長1064nmの近赤外線レーザーです。
Nd:YAGレーザーは、メラニンやヘモグロビンなどの色素を含む組織と相互作用しやすく、比較的深部まで光エネルギーが到達する特性があります。
また、細い光ファイバーを歯周ポケット内へ挿入して使用できるため、歯周治療では軟組織への処置や止血、歯周ポケット内の細菌負荷へのアプローチなどに応用されています。
一方、Nd:YAGレーザーは、歯石を取るためのレーザーではありません。
歯石やバイオフィルムの機械的除去は、スケーラーや超音波器具などを用いて行います。
機械的な処置とレーザーには、それぞれ異なる役割があります。
歯周ポケット内の細菌負荷を減らすために
歯周病の進行には、歯周ポケット内に形成される細菌性バイオフィルムが深く関係しています。
そのため、歯石を除去するだけでなく、歯周ポケット内の細菌負荷を減らし、炎症が改善しやすい環境をつくることも重要です。
Nd:YAGレーザーについては、歯周病原細菌に対する作用が研究されています。
6mm以上の深い歯周ポケットを対象とした臨床研究では、Nd:YAGレーザー照射直後に、Porphyromonas gingivalisなどを含む培養可能な歯周病原細菌群が平均59.2%減少したことが報告されています。
ただし、この研究でも照射後にすべての細菌が消失したわけではありません。
つまり、レーザーの目的は、「歯周病菌を完全に殺菌すること」ではなく、細菌負荷を減らすこと。
当院ではこのように考えています。
出典:Journal of Periodontal & Implant Science, 2022
通常の歯周病治療に加えることで、どの程度の効果があるのか
Nd:YAGレーザーを歯周病治療に併用する効果については、多くの臨床研究が行われています。
2026年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、22件のランダム化比較試験、合計776名を対象に、通常のスケーリング・ルートプレーニングのみの場合と、Nd:YAGレーザーを併用した場合が比較されました。
その結果、レーザーを併用した場合には、歯周ポケットの深さが平均0.46mm追加的に減少していました。
一方で、臨床的アタッチメントレベルやプロービング時出血、プラーク指数などでは、通常治療に対する明確な追加効果は確認されませんでした。
つまり現在の研究からは、Nd:YAGレーザーには一定の補助的効果が期待できるものの、通常の歯周病治療に置き換わる治療ではないと考えるのが適切です。
出典:Photochemical & Photobiological Sciences, 2026
できるだけ侵襲を抑えながら、もう一つのアプローチを
歯周病が進行した場合、状態によっては歯周外科治療が必要になることがあります。
一方で、非外科的な歯周治療の段階で、できるだけ侵襲を抑えながら治療効果を高めるためにできることを検討することも重要です。
Nd:YAGレーザーは、細いファイバーを歯周ポケット内へ挿入できるため、外科的に歯肉を開くことなく、歯周ポケット内へ追加的にアプローチできる手段のひとつです。
当院では、
歯石・バイオフィルムを機械的に除去する + Nd:YAGレーザーで細菌負荷の減少を図る
という考え方で治療を行っています。